【検証済み】ChatGPTの役割設定は本当に意味がある?ロール設定の効果を発揮する利用シーンを公開
- よく見かけるロールや役割の設定は本当にアウトプットの質は変る?
- 【検証】ChatGPTでのロールや役割・キャラクター設定に意味はあるか
- ロールや役割を設定しない場合
- 有名なコピーライター
- 有名な裁判官
- 世界一有名なマーケティングエキスパート
- 更生した元犯罪者で現役神父
- 日本語が不自由な西洋人5歳児
- XJAPANのYOSHIKI
- 【検証結果】どのようなキャラクター・ロールや役割設定に意味がある?
- 若干の雑談
- どのような場面ならロールや役割の設定に意味があるのか
- コーチングの練習
- 模擬裁判
- 模擬MTG
- 【番外編】「LinuxのTerminalになりきってもらう」という使い方
- 何故「ロールや役割の設定が必須」という情報が蔓延されているのか?
- 前まではロールや役割を与えることで精度の高い回答を得ることができた
- GPT3.5 Turbo以降は反映されなくなった
- それでもロールや役割設定が行われている理由は?
- 制約としての役割設定も実はあまり意味がない
- まとめ
【検証済み】ChatGPTの役割設定は本当に意味がある?ロール設定の効果を発揮する利用シーンを公開
突然ですが、
あなたは有名なコピーライターです
あなたはマーケティングのエキスパートです。
このように始まるChatGPTのPromptを見たことはありますか?
巷では、
このようにロールや役割の指定をすれば、パフォーマンスの質を上げることができる
と言われています。
しかし、果たしてこのようなロールや役割を指定しなければ、
もしくは、全く関係のないキャラクター設定にした場合、
アウトプットの質は本当に下がるのでしょうか?
ChatGPTに有名なコピーライターになりきってもらわないと、ChatGPTが考え出すキャッチコピーの質は下がるのでしょうか?
すなわち、ChatGPTでのロールや役割・キャラクター設定は本当に意味があるのでしょうか?
この記事では、この問いを出発点として、
実際に検証しながら、ChatGPTでのロールや役割設定について
- ChatGPTでのロールや役割・キャラクター設定に意味はあるか
- どのような場面なら意味があるのか
を解明していきます。
ちなみに、仮にChatGPTのロールや役割設定に意味がなくても、
デメリットはありませんので、入れたければ入れるだけでも問題ありません。
しかし、それはChatGPTを使っている場合だけです。
仮にAPIやPlaygroundは、トークン数での従量課金なので、
不要なインプットを徹底的に取り除く必要があります。
よく見かけるロールや役割の設定は本当にアウトプットの質は変る?
皆さんは、まず下記2つのPromptをChatGPTに入力し、結果を比較してみてください。
最初は、ロールや役割設定なしバージョンです。
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続いて、よく見かけるロールや役割設定バージョンです。
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結果の質は全く変わらないはずです。
特に、それぞれを3~4回ずつ執行すれば、
どれがどれかが分からなくなります。
となると、ロールや役割の設定は本当に意味があるのか
という疑問が生じますので、
これより、検証をします。
【検証】ChatGPTでのロールや役割・キャラクター設定に意味はあるか
では早速検証開始です。
ロールや役割設定をしないバージョンに加えて、
下記のロールや役割
- 有名なコピーライター
- 有名な裁判官
- 世界一有名なマーケティングエキスパート
- 更生した元犯罪者で現役神父
- 日本語が不自由な西洋人5歳児
- XJAPANのYOSHIKI
を設定し、
私は中華風ハンバーグステーキ専門店を営んでおり、キャッチコピーが必要なので、アイディアを10つ提案せよ
というタスクをそれぞれのキャラクターになりきったChatGPTに執行してもらいます。
ロールや役割を設定しない場合
まず、ロールや役割を設定しない場合、ChatGPTが生成してくれたキャッチコピーは下記通りです
- 味わい深い旅、一口サイズの中国へ
- ハンバーグの常識を塗り替える中華の旋風
- 中華とハンバーグの絶妙な融合、新しい味の発見
- ひとつひとつ手作り、本格中華ハンバーグの極みへ
- ハンバーグが香る、それは東洋の風味
- 一度食べれば忘れられない、中華風ハンバーグの魅力
- フレッシュ&フレーバー満点、中華ハンバーグの新境地
- 一皿で中国旅行、驚きのハンバーグ体験
- 中華風ハンバーグ、新感覚の味わいを求めて
- 心と舌を導く、真の中華ハンバーグステーキ
シンプルなPromptの割には、そこそこで出来でありましょう。
では、「有名なコピーライター」になりきってもらった場合はどうでしょうか?
有名なコピーライター
有名なコピーライターがクリエイトしてくれたキャッチコピーは下記通りです。
- 一口で中華の世界へ、私たちのハンバーグステーキ。
- 東洋の香り漂う一皿。中華風ハンバーグステーキで旅をはじめよう。
- あなたの食卓に新風を。アジアの味、ハンバーグステーキの新しいスタンダード。
- 中華の魅力を一口で。ハンバーグステーキの新たなる可能性をご体感ください。
- ハンバーグステーキと中華、二つの美味しさが一つに。
- 中華風ハンバーグステーキ、一度食べたら忘れられない美味しさ。
- ハンバーグステーキを一変させる一皿。中華のフュージョンをお楽しみください。
- 一口食べれば、香り高いスパイスと旨味が口の中に広がる。それが私たちの中華風ハンバーグステーキ。
- 東洋の味と西洋の食文化が出会った。これが私たちの中華風ハンバーグステーキ。
- 一皿の中に旅を。私たちの中華風ハンバーグステーキでアジアの風味をお楽しみください。
キャッチコピー自体が長くなるだけで、アウトプットの質が格段に上がるような気はしません。
では、全く関係のない職業に設定した場合はどうでしょうか?
有名な裁判官
今度は有名な裁判官になりきってもらったら、下記のようなキャッチコピーを提案してくれました。
- 一口で北京へ! ハンバーグの新しい舞台
- 東洋の風味が溢れ出す、当店だけの中華ハンバーグステーキ
- ハンバーグを再発見、中華の香りと共に
- 中国風にこだわり抜いたハンバーグ、ここにあり
- 中華風味の秘密が詰まったハンバーグステーキ
- アジアの風が吹く! 新感覚のハンバーグステーキ
- 旅する味覚、ハンバーグで中国へ
- 四川の辛さ、広東の旨み、一皿に凝縮
- 東洋の風味を極めた、特製中華ハンバーグステーキ
- 一口で中国旅行、ここだけのハンバーグ体験
特筆すべきことは、
一つ目の「一口で北京へ! ハンバーグの新しい舞台」は、
コピーライターの一つ目の「一口で中華の世界へ、私たちのハンバーグステーキ。」と極めて類似しており、
人によってはもしかしたら裁判官のほうが良いかもしれません。
もう少し、関連性のある職業で試したいので、今度は世界一有名なマーケティングエキスパートに設定します。
世界一有名なマーケティングエキスパート
世界一有名なマーケティングエキスパートはどんな提案をしてくれたかといえば、
- 東洋の味、洋食の心。最高のハンバーグステーキを体験せよ!
- 一口食べれば、中華とステーキのハーモニーが広がる
- ステーキと中華の融合、驚きのハンバーグ体験
- 素材へのこだわり、中華の風味、ハンバーグの新境地へ
- 中華風ハンバーグステーキ、未知の味覚旅行へようこそ
- ハンバーグステーキの革命、中華の魔法を試せ
- 東洋の風味が絡み合う、究極のハンバーグステーキ
- 中華風ハンバーグステーキ、一度味わえば忘れられない
- 肉とスパイスのバランスが創り出す、驚きのハンバーグステーキ
- 本場の中華風ハンバーグステーキ、旅を超えた美味しさ
です。
では、続いて、ややふざけた設定を2つ。
更生した元犯罪者で現役神父
意味不明だが、更生した元犯罪者で現役神父にキャッチコピーを考えてもらうことにしました。
- 味覚の旅路、東洋から西洋へ
- あなたのハンバーグ、新しい境地へ
- 中華風ハンバーグ - 次なるステーキの進化
- 西洋のハート、東洋の味 - 最高のコラボレーション
- ここでしか味わえない、ハンバーグの革新
- 一口でアジアを旅する、中華風ハンバーグステーキ
- ハンバーグの新常識、東洋の風味で
- ステーキと中華、新たな一体感
- 世界を肉一つでつなぐ、中華風ハンバーグステーキ
- ハンバーグが香り立つ、東西の融合
元犯罪者であると同時に元コピーライターでしょうか。
結構なアウトプットです。
ふざけた設定をもう一本。
日本語が不自由な西洋人5歳児
- 中華風の魔法で、肉の饗宴をお楽しみください!
- 東洋の味わい、西洋の食感、ここで一つに!
- お腹も心も満たす、香ばしいハンバーグステーキの旅へ
- ひとつひとつ愛情を込めて、思わず笑顔になるハンバーグステーキ
- 異国の味わいが一皿に。新感覚の中華ハンバーグステーキをお試しあれ!
- スパイスとソースの調和、その秘密は我々のハンバーグステーキに
- 当店だけのユニークな風味、中華ハンバーグステーキの新たな世界を体験
- 味わい深い中華ソースとジューシーなステーキ、最高の組み合わせ
- 一口食べれば虜に。我々の中華ハンバーグステーキで新たな食体験を
- おいしさ満点、楽しさ無限大!ここでしか味わえない、中華ハンバーグステーキをお楽しみください
日本語が不自由なはずなのに、この出来とは・・・・・・
もうはや、ロールや役割をどう設定すれば分からなくなりましたので、
最後に、職業とかキャラクターではなく、実在する人物にします。
XJAPANのYOSHIKI
XJAPANのYOSHIKIは
- 味のシンフォニー、中華風ハンバーグステーキで舌鼓!
- YOSHIKIも感動、魅惑のハンバーグステーキ体験
- XJAPANのように唯一無二、私たちの中華風ハンバーグステーキ
- ハンバーグの饗宴、その一切れに舞う中華の香り
- 東洋と西洋のコラボ、美味と感動のハーモニー
- ハンバーグステーキと一緒に、XJAPANの情熱を味わってみませんか?
- 中華風ハンバーグステーキ、その一口で東洋の旅へ
- YOSHIKIが愛した味、中華風ハンバーグステーキの世界へようこそ
- 味わいのバラード、一口で心に響くハンバーグステーキ
- XJAPANのメロディのように、心に深く響く私たちのハンバーグステーキ
を提案してくれました。
ここまで、色々なロールや役割設定をしましたが、
唯一「ロールや役割の設定内容がアウトプットにダイレクトに反映された」ケースです。
【検証結果】どのようなキャラクター・ロールや役割設定に意味がある?
ここまで見てきたように、
職業、職種などの設定は意味がない
ことが分かります。
一方で、実在する人物であれば、その人の雰囲気、世界観、口調は反映されるようです。
この記事ではXJAPANのYOSHIKIの例だけ掲載していますが、
例えば、「村上春樹」の場合ですと、
- ハンバーグと、それから何かが起こる。
- 味わいの奥深さに、あなたも迷い込む。
を提案してくれたり、
長州力の場合ですと
- 肉の戦士、長州力の調理で一味違う!
- 長州パワー満載!中華風ハンバーグステーキ
だったりします。
長州力の場合は、長州力になりきってキャッチコピーを生成しているというより、
長州力とコラボした際のキャッチコピーでしょう。
また、Metallicaという80年代のヘビーメタルバンドで設定した場合も
- メタルの熱さで焼き上げる、最高の中華風ハンバーグステーキ!
- メタルとハンバーグステーキの融合、それが我々のリズム!
やはり、そのバンドがキャッチコピーを考えているというより、
スタイルを変えているだけで、メタルバンド風のキャッチコピーになっています。
ただ、職業・職種の設定より遥かに意味があることがわかるでしょう。
なので、結論として
特定の人物やキャラクターの世界観・口調・スタイル・雰囲気をアウトプットに反映させたいのであれば、
設定すべきですが、単なる職業や職種の設定は、アウトプットの質に影響しません。
若干の雑談
本当はその人物は実在しなくても良いです。
例えば、アニメキャラクターの場合でも、きちんと反映されます。
ポイントはChatGPTがそのキャラクターを知っている(学習している)かどうかです。
逆に、実在している人物でも、ChatGPTがあまり知らなければ、
アウトプットには反映されません。
残念ながら、尾崎豊もジャンボ尾崎も、その類に入っているようです。
どのような場面ならロールや役割の設定に意味があるのか
一方で、ロールや役割の設定は全く意味がないかといえば、
そうでもありません。
ロールや役割プレイは必要なロールや役割プレイングの場面では、ロールや役割の設定は役に立ちます。
これより、いくつかの利用シーンを簡単に紹介します。
コーチングの練習
コーチングを提供している方は、ChatGPTとコーチングの練習ができます。
こういうケースでは、むしろロールや役割の設定が必須でしょう。
模擬裁判
模擬裁判をやるのもなかなか面白いです。
原告、被告、代理人、証人、裁判官など、色々なキャラクターの設定ができます。
模擬MTG
例えば、少人数とか1人でやっている会社が、新規事業の立ち上げMTGをChatGPTと一緒にやるという使い方です。
自分がCEOとして、ChatGPTに、
- COO(最高執行責任者)
- CFO(最高財務責任者)
- CTO(最高技術責任者)
- CMO(最高マーケティング責任者)
- CIO(最高情報責任者)
- CHRO(最高人事責任者)
- CLO(最高法務責任者)
になりきってもらい、
会議を行うという使い方です。
ちなみに、ChatGPTが生成できるコンテンツは、実は変わらないので、
模擬MTGの形でなくても、単に「CLOの観点から意見をください」とか、「法務担当者の考え方を聞きたい」でも、
同じフィードバックを得られます。
ただ、MTGという形のほうが「臨場感」があるかもしれません。
【番外編】「LinuxのTerminalになりきってもらう」という使い方
ややマニアックな使い方であり、正直、実用性がどこにあるかはわかりませんが、
Terminalになりきってもらうという使い方もあるようです。
I want you to act as a Linux terminal. I will type commands and you will reply with what the terminal should show. I want you to only reply with the terminal output inside one unique code block, and nothing else. Do not write explanations. Do not type commands unless I instruct you to do so. When I need to tell you something in English I will do so by putting text inside curly brackets {like this}. My first command is pwd.
これを実際にPromptとしてChatGPTに指示すると、
ChatGPTは
このように、LinuxのTerminalとして反応してくれます。
何故「ロールや役割の設定が必須」という情報が蔓延されているのか?
ここまで、ロールや役割の設定、キャラクター指定は、必須ではなく、
限定的であることがわかりました。
では、何故「ロールや役割の設定が必須」という情報が蔓延され、主流になったのでしょうか?
前まではロールや役割を与えることで精度の高い回答を得ることができた
実は、ChatGPTのAPIでは、ロール設定の「Assistant=AI」、「User=ユーザ」以外に、「system」があり、
投げかける質問に応じてに「system」にロールや役割を与えることで、精度の高い回答を得ることができました。
GPT3.5 Turbo以降は反映されなくなった
しかし、GPT3.5 Turbo以降では、「system」の設定は重視されなくなり、
ChatGPTも無料ユーザでもGPT3.5 Turboがスタンダードになったので、
実質上、ロールや役割の設定は意味をなさなくなりました。
それでもロールや役割設定が行われている理由は?
ロールや役割の設定は意味をなさなくなったにも関わらず、それでもロールや役割設定が行われている理由としては主に
- 意味をなさなくなったことを知らない
- なんとなく役割を設定した方が気持ちいい
- 制約としての役割設定だから
の3つが考えられます。
1と2は説明不要で、ここでは、三つ目の「制約としての役割設定だから」という理由についてもう少し詳しく解説します。
制約としての役割設定も実はあまり意味がない
制約としての役割設定を行っている方のロジックはこうです。
- Promptには制約が必要
- 役割設定するとそのロールや役割由来の制約が加えられる
- だからPromptには役割設定が必要
一見するとごもっともですが、
しかしながら、よく考えると、
そのロールや役割由来の特有の制約はなに?
となってしまいます。
制約を加えるならば、そのまま制約を言葉にすべきであり、
もしPromptに付け加えたい制約を文字化にできないなら、
それはそのPrompt自体がまだ完成段階に達していないということになります。
まとめ
この記事は、ChatGPTのキャラクターや役割の設定について詳しく解説していました。
主なポイントは以下のとおりです:
まず、職業や職種といった設定は、ChatGPTの出力にはあまり影響を及ぼさないということがわかりました。
一方、特定の人物やキャラクターの世界観、口調、スタイル、雰囲気を出力に反映させたい場合には、その設定は重要です。
さらに、ChatGPTがその人物をあまり知らない場合、たとえその人物が実在していても、その人物の特性は出力に反映されないことがわかりました。
また、役割やロールの設定が有用となる具体的なシナリオも紹介しました。
コーチングの練習、模擬裁判、模擬MTGといった状況では、適切な役割やロールの設定が役立つのです。